高松地方裁判所 平成6年(ワ)145号 判決 1998年2月17日
呼称
原告
氏名又は名称
株式会社香東工業
住所又は居所
香川県香川郡香南町大字由佐五一五番地一
代理人弁護士
福地祐一
輔佐人弁理士
松尾憲一郎
呼称
被告
氏名又は名称
大円工業株式会社
住所又は居所
愛知県春日井市南花長町一八番地の三五
代理人弁護士
渡邉一平
代理人弁護士
太田耕治
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙「被告の脱型プラント説明書」記載のイ号装置、ロ号装置、ハ号装置を製造し、販売してはならない。
二 被告は、別紙「被告の新脱型プラント説明書」記載の新イ号装置、新ロ号装置、新ハ号装置を製造し、販売してはならない。
三 被告は、原告に対し、三三七〇万円及びこれに対する平成七年三月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、コンクリート管型枠の中子保持装置の実用新案権(以下「A実用新案権」という)、コンクリート管の型枠分解装置の特許権(以下「B特許権」という)及びコンクリート管の脱型方法の特許権(以下「C特許権」といい、A実用新案権、B特許権及びC特許権を併せて「本件特許権等」という。)の権利者である原告が、被告に対し、被告はイ号装置、ロ号装置及びハ号装置(以下、併せて「旧装置」という。)からなるコンクリート管脱型プラント(以下「旧プラント」という。)ないし新イ号装置、新ロ号装置及び新ハ号装置(以下、併せて「新装置」という。)からなるコンクリート管脱型プラント(以下「新プラント」という。)を製造販売し、原告の本件特許権等を侵害したとして、▲1▼B特許権の直接侵害に基づくロ号装置及び新ロ号装置の製造販売等の差し止め、▲2▼C特許権の間接侵害に基づく旧装置及び新装置の製造販売等の差し止め、▲3▼イ号装置及び新イ号装置の製造販売等によるA実用新案権の侵害、ロ号装置及び新ロ号装置の製造販売等によるB特許権の侵害並びに旧装置及び新装置の製造販売等によるC特許権の侵害の各不法行為に基づき、実施料相当額の損害賠償及びこれに対する訴えの交換的変更の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
一 前提となる事実(証拠番号の記載のないものは当事者間に争いがない)
1 原告の権利
原告は、次のとおり本件特許権等を有している。(以下、各考案ないし発明をそれぞれ「A実用新案」「B特許発明」「C特許発明」といい、これらをまとめて「本件特許発明等」という。)
(一) A実用新案権
考案の名称 ヒューム管型枠の中子保持装置
出願日 昭和五五年七月一六日(実願昭五五ー一〇〇七八六号)
出願公告日 昭和五九年一一月十三日(実公昭五九ー四〇一七七号)
登録日 昭和六〇年六月二五日
登録番号 第一六〇一一八八号
実用新案登録請求の範囲
「ヒューム管型枠を構成する外筒の両端部に夫々受環が固定され、該受環の孔に螺杆が回転自在に貫通され、該螺杆の内端に螺嵌されたナットと受環の孔の周辺部との間に圧縮バネが介装され、螺杆の外端には爪片が固着され、該爪片の先端と受環の端部又は、外筒の端部との間に中子保持押環が着脱自在に挾着されたことを特徴とする、ヒューム管型枠の中子保持装置。」
なお、A実用新案権の存続期間は平成六年一一月一二日をもって終了した。
(二) B特許権
発明の名称 コンクリート管の型枠分解装置
出願日 昭和五六年五月二二日(特願昭五六ー七八二〇〇号)
出願公告日 昭和六〇年七月一〇日(特公昭六〇ー二九三二九号)
登録日 昭和六一年二月二八日
登録番号 第一三〇四五八四号
特許請求の範囲
「コンクリート管用型枠を、筒型本体型と、その端部に固定された鍔と、該鍔に嵌脱自在に嵌合された端型と、該端型に外方へ突出するよう形成された爪受環と、鍔に回転自在に貫通支持され爪受環から一定距離に配された数個の軸杆と、該各軸杆の外端に固定された係脱片と、該係脱片を内方へ付勢するバネとから構成し、前記型枠の長さ方向に往復動可能なスライダーを設け、該スライダーに、型枠の半径方向に沿って配された数個の同時回転ボルトと、該各ボルトに螺合されたナットと、該ナットに固定された数個の爪受環係合用爪付爪板と、型枠の半径方向で爪から一定距離に配された数個の伸縮杆と、該伸縮杆に突設された係脱片回転用突子とを設けて成る、コンクリート管の型枠分解装置。」
(三) C特許権
発明の名称 コンクリート管の脱型方法
出願日 昭和五五年九月九日(特願昭五五ー一二六四五九号)
出願公告日 昭和六〇年一月一〇日(特公昭六〇ー八八五号)
登録日 昭和六〇年七月三一日
登録番号 第一二七五八一〇号
特許請求の範囲
「型枠を、本体型と、その両端に固定の鍔と、該鍔に嵌脱自在に嵌合された端型と、鍔に回転自在に貫通支持された数個の軸杆と、該軸杆の外端に固定の係脱片と、該係脱片を内方へ付勢するバネとから構成し、コンクリート管の充填乾燥状態の型枠を主コンベアで型分解ステーションへ送り、ここで端型を第一クランプで固定し、係脱片を伸縮杆で係合位置から離脱位置へ切換え、前記、クランプを後退させて端型を分解して、これを副コンベア上に載せ、その後、本体型を主コンベアで脱型ステーションへ送り、ここで小径側鍔を第二クランプで固定し、且つ、押出盤を押出して、コンクリート管を脱型させる脱型方法。」
なお、原告のA実用新案、B特許発明及びC特許発明における用語は次のように対応している(甲五、六、八、弁論の全趣旨)。(以下、用語例欄記載のとおりに表記する。)
A実用新案 B特許発明 C特許発明 用語例
受環 鍔 鍔 鍔
螺杆 軸杆 軸杆 軸杆
圧縮バネ バネ バネ 圧縮バネ
爪片 係脱片 係脱片 爪片
中子保持押環 端型 端型 端型
ナット 爪受環係合用 爪付爪板 第一クランプ ナット 爪受環係合用 爪付爪板
同時回転ボルト ボルト ネジ ボルト
2 本件特許発明等の構成要件の分説
(一) A実用新案(記号ないし番号は、別紙A実用新案公報記載の図面に表示されたものである)
A▲1▼ ヒューム管型枠を構成する外筒21の両端部に夫々鍔22a、22bが固定され、
A▲2▼ 該鍔の孔23a、23bに軸杆24a、24bが回転自在に貫通され、
A▲3▼ 該軸杆の内端に螺嵌されたナット25a、25bと鍔の孔23a、23bの周辺部との間に圧縮バネ26a、26bが介装され、
A▲4▼ 軸杆24a、24bの外端には爪片27a、27bが固着され、、
A▲5▼ 該爪片の先端と鍔22bの端部28b又は外筒21の端部28aとの間に端型29a、29bが着脱自在に挾着されたことを特徴とする、
A▲6▼ ヒューム管型枠の中子保持装置。
(二) B特許発明(記号ないし番号は、別紙B特許公報記載の図面に表示されたものである)
B▲1▼ コンクリート管用型枠Aを、
筒型本体型1と、
その端部に固定された鍔2と、
該鍔2に嵌脱自在に嵌合された端型3と、
該端型に外方へ突出するよう形成された爪受環3aと、
鍔2に回転自在に貫通支持され爪受環3aから一定距離Dに配された数個の軸杆4と、
該各軸杆の外端に固定された爪片5と、
該爪片を内方へ付勢する圧縮バネ6とから構成し、
B▲2▼ 前記型枠Aの長さ方向に往復動可能なスライダーSを設け、
B▲3▼ 該スライダーに、
型枠Aの半径方向に沿って配された数個のボルト11と、
該各ボルトに螺合されたナット12と、
該ナットに固定された数個の爪受環係合用爪13付爪板14と、
型枠Aの半径方向で爪13から一定距離Eに配された数個の伸縮杆16と、
該伸縮杆に突設された爪片回転用突子16aと
を設けて成る
B▲4▼ コンクリート管の型枠分解装置。
(三) C特許発明(記号ないし番号は、別紙C特許公報記載の図面に表示されたものである。)
C▲1▼ 型枠Aを、
本体型1と、
その両端に固定の鍔2、2aと、
該鍔に嵌脱自在に嵌合された端型3、3aと、
鍔に回転自在に貫通支持された数個の軸杆4と、
該軸杆の外端に固定の爪片5と、
該爪片を内方へ付勢するバネ6とから構成し、
C▲2▼ コンクリート管の充填乾燥状態の型枠Aを主コンベア8で型分解ステーション9へ送り、
C▲3▼ ここで端型3を爪受環係合用爪付爪板C1で固定し、
爪片5を伸縮杆16で係合位置から離脱位置へ切換え、
前記爪受環係合用爪付爪板を後退させて端型3を分解して、これを副コンベア8a上に載せ、
C▲4▼ その後、本体型1を主コンベアで脱型ステーション19へ送り、ここで小径側鍔を第二クランプC2で固定し、且つ、押出盤23を押出してコンクリート管を脱型させる
C▲5▼ 脱型方法。
3 被告の行為
被告は、別紙「被告の新脱型プラント説明書」(以下「新プラント説明書」という。)記載の新プラントを業として製造販売している(ただし、同説明書中の「鍔」を「タイヤ」と、「爪片」を「ハッカー」と、「主コンベアチェン」及び「副コンベアチェン」を「コンベアチェン」とそれぞれ読み替える。なお、新プラント説明書の第4図の59の右側及び第5図の59の右側にあるブラッシング装置の位置及びコンベアの本数については争いがあるが、本件特許発明等の技術的範囲には直接関係がない。)。
被告が製造する新プラントの工程の概要は、新プラント説明書Ⅰ記載のとおりであり、その第二工程(分解ステーションで型枠から端部に装着した端型を取り外す工程)及び第四工程(脱型ステーションで型枠よりコンクリート管を押し出して取り出す工程)において、次のとおり、被告製造にかかる新装置が使用されている。
(一) 新イ号装置
新イ号装置は、新プラントの第二工程における筒型本体型に端型を着脱自在に装着したコンクリート管用型枠であり、新プラント説明書添付図面記載の型枠Mである。新イ号装置の構造は、同説明書のⅡ(1)記載のとおりである。
(二) 新ロ号装置
新ロ号装置は、新プラントの第二工程において新イ号装置を分解する装置、すなわち、コンベアチェンで搬送されてきた型枠から端型を取り外す装置である。新ロ号装置の構造は、新プラント説明書のⅡ(2)(3)記載のとおりである。
(三) 新ハ号装置
新ハ号装置は、第四工程における脱型装置であり、新イ号装置を新ロ号装置で分解した後に、コンクリート管を型枠内から脱型するための装置である。新ハ号装置の構造は、新プラント説明書のⅣ(1)(2)記載のとおりである。
4 新イ号装置及び新ロ号装置の構成要件並びに新ハ号装置を用いた脱型方法の分説
(一) 新イ号装置の構成要件の分説
イ▲1▼ コンクリート管用の型枠Mを構成する筒型本体型51の両端部に、それぞれタイヤ52が固定され、
イ▲2▼ 該タイヤ52の孔に軸杆54が貫通支持されており、
イ▲3▼ 該軸杆54の外端に固定されたボルト頭55と、ハッカー56との間に圧縮バネ57が介装されており、
イ▲4▼ 軸杆54の外方突出部にはハッカー56が遊嵌され、
イ▲5▼ 該ハッカー56の先端と筒型本体型51の端部との間に、端型53の周縁を挾着するようにしている
イ▲6▼ コンクリート管用の型枠の端型保持装置
(二) 新ロ号装置の構成要件の分説
ロ▲1▼ コンクリート管用の型枠Mを、
筒型本体型51と、
その端部に固定されたタイヤ52と、
該タイヤ52に嵌脱自在に嵌合された端型53と、
タイヤ52に貫通支持された軸杆Mと、
該軸杆Mの外端に遊嵌されたハッカー56と、
該ハッカー56を内方へ付勢する圧縮バネ57とから構成し、
ロ▲2▼ 前記型枠Mの長さ方向に往復可動な移動箱64を設け、
ロ▲3▼ 該移動箱64に、
型枠Mの半径方向に沿って配された十文字状の外し盤67と、
数個の外し盤67に九〇度間隔で設けたガイド体68と、
該ガイド体68に設けられた移動溝69と、
該移動溝69に摺動自在に遊嵌された係止移動片70と、
型枠Mの半径方向に沿って配された数個のピニオン71と、
該ピニオン71に噛合したラックRと、
該ラックに一体となった係止移動片70と、
係止移動片70を十文字状の外し盤67と共に回転させるために、中空軸66の中途に配設した歯車75及びラック76の回転構造と、
係止移動片70の横側方に突設してハッカー56回転用の押圧ピン58を叩くための叩きピンび70'と、
端型53の外周縁の角部と係合すべく係止移動片70の先端に設けた係合用突片70aと
を設けた
ロ▲4▼ コンクリート管用の型枠の分解装置。
(三) 新ハ号装置を用いた脱型方法の分説
ハ▲1▼ 型枠を、
筒型本体型と、
その両端に固定したタイヤ52と、
該タイヤ52に遊嵌自在に嵌合された端型53と、
タイヤ52に挿貫された軸杆Mと、
該軸杆54の外端側に遊嵌したハッカー56と、
該ハッカー56を内方へ付勢する圧縮バネ57とから構成し、
ハ▲2▼ コンクリート管Pを内包した型枠Mをコンベアチェン59▲1▼で型枠分解のステーションへ送り、
ハ▲3▼ ここで、係止移動片70の回転により筒型本体型51のタイヤ52に回転自在に設けたハッカー56を端型53の係合位置から離脱位置へと切換え、端型53の外周縁角部に、係止移動片70の係合用突片70aを係合して、端型53を係止移動片70で把持し、次いで係止移動片70を後退させ、端型53を筒型本体型51から分解し、これをコンベアチェン59▲2▼上に移動させる。
ハ▲4▼ その後、筒型本体型をコンベアチェン59▲1▼で脱型ステーションへ送り、ここで、脱型装置の把持装置90にて筒型本体型51の一端部分の外側保持部51'をつかみ固定して押板91を油圧シリンダ92で押して、筒型本体型51からコンクリート管Pを脱型させる
ハ▲5▼ 脱型方法。
5 なお、原告の本件特許発明等における「鍔」「爪片」は、被告の新旧各装置における「タイヤ」「ハッカー」に対応している(ただし、爪片とハッカーの形状の違いについては後述のように争いがある。)。
二 争点
1 被告が旧装置を製造販売したか。
(原告の主張)
(一) 構造
被告は、別紙「被告の脱型プラント説明書」(以下「旧プラント説明書」という。)記載の旧プラントを業として製造販売している(ただし、同説明書中「鍔」を「タイヤ」と、「爪片」を「ハッカー」と、「主コンベアチェン」及び「副コンベアチェン」を「コンベアチェン」とそれぞれ読み替える。)。旧装置の構造は旧プラント説明書記載のとおりであり、新プラントにおける新装置にそれぞれ対応しているが、旧プラント説明書と新プラント説明書との添付図面でいえば、次の相違点がある(なお、ブラッシングの位置は本件発明等の技術的範囲とは直接関係がない。)。
第1図 ブラッシングの位置
第2図 係合溝53の有無、ハッカー56の形状
第3図 係合溝3の有無
第4図 ブラッシングの位置
第5図 ブラッシングの位置
第6図 係止移動片70の形状
第7図 係合用突片kmの引出線
第10図 係止移動片70、タイヤ52及びハッカー56の形状
第12図 クランプ93の形状
第13図 クランプシリンダ94の形状
第14図 クランプシリンダ94の形状
すなわち、旧装置と新装置は、▲1▼旧装置の端型53の端面に設けられていた係合溝53が、新装置では削除されていること、▲2▼新装置では端型53の端面はタイヤ52の端面より、やや突出していること、▲3▼軸杆Mとハッカー56の作動関係、▲4▼係止移動片70及び係合用突片70aの位置関係の点が異なる。
(二) 構成要件等の分説
(1) イ号装置の構成要件の分説
前記4(一)の新イ号装置の構成要件の分説に同じ
(2) ロ号装置の構成要件の分説
前記(一)の違いに基づき、前記4(二)の新ロ号装置の構成要件の分説のうち、ロ▲1▼及びロ▲3▼が、次のロ、▲1▼′及びロ▲3▼′のようになるが(点線部分が変更部分である。)、その余は同一である。
ロ▲1▼′ コンクリート管用の型枠Mを、
筒型本体型51と、
その端部に固定されたタイヤ52と、
該タイヤ52に嵌脱自在に嵌合された端型53と、
該端型53の端面に、等間隔で形成された係合溝53aと、
タイヤ52に貫通支持された軸杆Mと、
該軸杆54の外端に遊嵌されたハッカー56と、
該ハッカー56を内方へ付勢する圧縮バネ57とから構成し、
ロ▲3▼′ 該移動箱64に、
型枠Mの半径方向に沿って配された十文字状の外し盤67と、
数個の外し盤67に九〇度間隔で設けたガイド体68と、
該ガイド体68に設けられた移動溝69と、
該移動溝69に摺動自在に遊嵌された係止移動片70と、
型枠Mの半径方向に沿って配された数個のピニオン71と、
該ピニオン71に噛合したラックRと、
該ラックに一体となった係止移動片70と、
係止移動片70を、十文字状の外し盤67と共に回転させるために、中空軸66の中途に配設した歯車75及びラック76の回転構造と、
係止移動片70の横側方に突設してハッカー56回転用の押圧ピン58を叩くための叩きピン70’と、
端型53の端面に形成した係合溝53と係合すべく係止移動片70の先端に設けた係合用突片70aと
を設けた
(3) ハ号装置を用いた脱型方法の分説
前記(一)の違いに基づき、前記4(三)の新ハ号装置を用いた脱型方法の分説のうち、ハ▲3▼が、次のハ▲3▼′のようになるが(点線部分が変更部分である。)、その余は同一である。
ハ▲3▼′ ここで、端型53の係合溝53aに、係止移動片70の係合用突片70aを係合して、端型53を係止移動片70で把持し、係止移動片70の回転により筒型本体型51のタイヤ52に回転自在に設けたハッカー56を端型53の係合位置から離脱位置へと切換え、次いで係止移動片70を後退させ、端型53を筒型本体型51から分解し、これをコンベアチェン59▲2▼上に移動させる。
2 新イ号装置及びイ号装置(以下、併せて「新旧イ号装置」という。)の製造販売はA実用新案権の直接侵害にあたるか。
(原告の主張)
(一) A実用新案の構成要件たるA▲1▼ないしA▲6▼は、次のとおり、新旧イ号装置の構成要件たるイ▲1▼ないしイ▲6▼をそれぞれ充足するので、新旧イ号装置はA実用新案の技術的範囲に属するものである。
(1) A▲1▼とイ▲1▼との対比
両者は同一構成である。
(2) A▲2▼とイ▲2▼との対比
両者はほぼ同一構成である。
(3) A▲3▼とイ▲3▼との対比
いずれも圧縮バネが介装されている点で同一である。
ただし、A▲3▼では圧縮バネが軸杆のナット側に介装されて爪片と直接に当接していないのに対し、イ▲3▼の圧縮バネは軸杆のボルト頭とハッカーとの間に介装されている点で異なる。しかし、圧縮バネを爪片(ハッカー)の圧着付勢に利用した技術では同一であり、単に圧縮バネの位置の差異であって、設計上の微差にすぎない。
(4) A▲4▼とイ▲4▼との対比
軸杆と爪片との関係が固着か遊嵌かの差異があるが、要は爪片が回転する機能を保持する構造であり、設計上の微差にすぎない。
(5) A▲5▼とイ▲5▼との対比
いずれも爪片の先端と鍔との問に端型を挾着した構造である点で同一である。爪片を圧着付勢する圧縮バネが爪片側に位置するか、鍔の内側に位置するかの差異は、設計上の微差にすぎない。
(6) A▲6▼とイ▲6▼との対比
両者は同一構成である。
(二) 設計上の微差(均等)
(1) 特許請求の範囲の記載をあまりに厳格に解釈すると、有用な発明の保護に欠ける。なお、平成六年法律第一一六号による改正後の特許法七〇条二項は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の定義を解釈するものと定めており、均等論を認めたものと認識されている。
ところで、原告の端型を爪片の回転により着脱するというA実用新案は、その出願前には類似の技術がないパイオニア的な基本技術であったといえる。このような。パイオニア的な考案ないし発明を保護するためには、その保護範囲については、実用新案登録請求の範囲や特許請求の範囲に記載の文言に厳格に狭く解するのは妥当でない。構成部材の差異は当業者であれば容易に置換でき、目的とする作用効果もほぼ同じであることからすれば、装置の基本的考え方が同じであり、かつ、構成部材が対応している場合には、構造上の差異は設計上の微差にすぎず、本件特許権等の技術的範囲に属するものと解すべきである。
(2) 本件におけるA実用新案と新イ号装置の技術思想は、いずれも爪片を圧縮バネで付勢して鍔に押圧、解除するところにあり、A実用新案の構造の要旨は、爪片で端型を押圧して固定し、爪片の回転によりこれを解除するために軸杆と圧縮バネを用いたところにある。
A実用新案と新旧イ号装置とは、軸杆が回転するかどうか、軸杆と爪片が一体かどうか、圧縮バネの位置が鍔の内側か外側か等の個々の構造は異なるものの、これらが一体となった構造の機能、すなわち、圧縮バネで爪片を端型に押圧して端型を鍔に押圧固定するといケ機能は同一である。圧縮バネ、軸杆及び爪片をいかに組み合わせるかは置換容易性の問題であり、圧縮バネの位置がA実用新案のように鍔の内側にあるか新旧イ号装置のように外側にあるかは設計上の問題にすぎず、置換は容易であるから、このような構造の微差があっても新旧イ号装置がA実用新案に近似した技術であることは異ならない。新旧イ号装置の構造は、A実用新案の構造を回避するために意図的に変型させたものである。
(3) なお、被告は、A実用新案におけるコンクリート液の付着による故障及び清掃の問題をいうが、現実の製品におけるA実用新案の実施例においては支障はなく、軸孔の清掃も不要である。むしろ、コンクリート液は端型の開口部から筒型本体型内に注入されるので、圧縮バネは鍔の外側より内側に配置した方がコンクリートが付着しにくい。
(4) したがって、新旧イ号装置とA実用新案との違いは設計上の微差にすぎず、A実用新案権の技術的範囲内に属するというべきである。
(三) 被告の先使用(公知技術)の主張についての反論
被告は、A実用新案の技術は公知技術であると主張するが、A実用新案の出願前に存在した公知技術は、別紙A実用新案公報の第一図及び第二図記載のものであり、新旧イ号装置は、右出願前に普及していた装置ではない。原告は、昭和五九年ころ、注文者の指示により庄縮バネが鍔の外側にある型枠製品を製作したことがあるが、コンクリート液漏れ等の不都合が生じたため、再び注文者の指示により圧縮バネを内側に戻したものであり、被告の装置を模倣したのではない。
また、原告の本件特許権等の審査の段階において公知技術の存在を理由とした拒絶理由通知はなかったから、右出願時には、本件特許権等に類似する技術はなかった。
(被告の主張)
(一) A実用新案と新イ号装置は次の点が異なる。
(1) A▲2▼とイ▲2▼について
A実用新案では軸杆が回転自在であるが、新イ号装置では軸杆は固定され回転できず、重要な違いがある。
(2) A▲3▼とイ▲3▼について
A実用新案では圧縮バネが鍔の内側にはめられているのに対して、新イ号装置では圧縮バネがタイヤの外側のハッカーとボルト頭との間にはめられており、重要な違いがある。
(3) A▲4▼とイ▲4▼について
軸杆に爪片が固着されているか、軸杆にハッカーが回転自在にはめられているかは、重要な違いである。
(4) A▲5▼とA▲5▼について
爪片は軸杆に固着された小片であるのに対し、ハッカーは軸杆に固着されておらず、L字型で、叩きやすいように一端が大きくなっており、また、一方の端部に押して回転させるための押圧ピンがあるので、爪片とハッカーは同一ではない。
要するに、新イ号装置とA実用新案は、▲1▼軸杆が回転可能かどうか、▲2▼圧縮バネの位置が鍔の内側か外側か、▲3▼ハッカーが軸杆に固着されているかどうか、▲4▼ハッカーの形状、の四点において異なり、これらの相違点はA実用新案の請求の範囲に記載された構成要件には含まれていない。
(二) 設計上の微差(均等)についての反論
(1) 実用新案の請求の範囲には実用新案を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない(実用新案法四条五項)。実用新案の保護範囲は明確でなければならないところ、請求の範囲は実用新案の保護範囲そのものであり、これに記載されていない構成まで保護されるとすれば、第三者に不測の損害が生じ、実用新案制度ものに対する信頼を損なうことになる。したがって、均等論や設計上の微差といえ方により実用新案の保護範囲を拡張することは認めるべきでない。特に、実用新案の登録要件としての新規性は、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたのでないこと(実用新案法三条二項)とされ、特許権の場合に比べてより程度の低い新規性で、容易に登録が認められているのであるから、その保護範囲は狭く解釈されるべきである。なお、このように解しても、出願者は、出願に際して請求の範囲を自由に定めることができるので不都合はない。
なお、原告はA実用新案はパイオニア発明であるというが、パイオニア発明とは、前例がなく新規性の極めて高い発明であるところ、本件のA実用新案は、せいぜい公知技術の一部の改良にすぎず、パイオニア発明とはいえない。また、原告は、A実用新案の出願に際し、圧縮バネの位置につき、鍔の内側と外側の両構成を検討した結果、内側の方がコンクリート液が付着しにくいとの理由から、あえて内側にはめる構成に限定して出願したものであるから、新イ号装置のように外側にしたものまでA実用新案の技術的範囲に入ると解すべきではない。
(2) 技術思想の違い
A実用新案の技術思想は、軸杆に固定された爪片を内方向へ押圧するというものであるから、鍔の軸孔に通した軸杆が回転できることが不可欠である。これに対し、新イ号装置の技術思想は、ハッカーをタイヤの外側からバネで直接付勢するというものであるから、ハッカーは回転自在でなければならないが、軸杆はタイヤに固定されればよく、回転する必要はない。
(3) 作用効果の違い
A実用新案においては、軸杆を回転させるため軸孔がやや大きいので、次第に漏れたコンクリート液が軸孔に詰まり、軸杆が回転しにくくなるという実用上重大な欠点がある。すなわち、鍔と端型とは爪片により押し付けられているにすぎず、ヒューム管を成型する際、遠心力により、鍔と端型の隙間からコンクリート液が漏れて軸孔や圧縮バネに付着してしまう。その結果、軸杆は回転には強い回転力が必要となり、軸杆が破損したり、回転不能になったりするので、狭くて長い軸孔のコンフリートを剥がすために、分解して清掃、修理する作業が必要となる。
これに対し、新イ号装置では一軸杆を回転させる必要はないので、軸孔にコンクリート液が詰まっても右のような不都合はない。また、新イ号装置で回転自在とされたハッカーの軸孔についてもコンクリート液は付着するが、タイヤの内側に比べて外側への液漏れば少ないうえ、新ロ号装置と併用される場合は、ハッカーは外すたびに叩きピンで叩かれるので、そもそもコンクリートが詰まりにくい。また、ハッカーの軸孔は短いうえ、ハッカーがタイヤの外側にありハンマー等で直接叩けるので清掃は容易である。
(4) 置換容易性について
前述のように、新イ号装置とA実用新案との相違点は数多く、かつ、相互に関連しているので、置換が容易であるとはいえない。
(三) 先使用権(公知技術)
ハッカーを使用して端型を型枠に脱着することは、ヒューム管製造分野において以前から広く行なわれており、被告は、昭和四七、八年ころ、中央コンクリートの注文で端型をハッカーで脱着する形式の型枠を試作し、小径のものを製造販売している。また、昭和五三年ころには、中日ヒューム管株式会社からの注文で新イ号装置の原型に当たる型枠(以下「中日ヒューム装置」という)を制作販売した。中日ヒューム装置と新イ号装置は、▲1▼軸杆は回転する必要がなく、▲2▼圧縮バネはハッカーの外側にはめられ直接ハッカーを付勢し、▲3▼ハッカーが軸杆に回転自在にはめられており、▲4▼ハッカーの形状は叩きやすいように一端が大きくなっている、といった基本的特徴は同一であったが、ハッカーの回転方法に違いがあり、中日ヒューム装置は、人がハンマーで叩いて回転させる手動式で、新イ号装置のように機械による自動式ではなかった。なお、被告は、昭和五四年以降、中京ヒューム管株式会社等に対し、中日ヒューム装置と同形式の型枠を製造販売したが、その端型脱着方法は、注文の約半数がボルト式でなくA実用新案や中日ヒューム装置及び新イ号装置のようなハッカー式であった。
このように、被告は、A実用新案の出願前から、新イ号装置及びA実用新案と同様にハッカーの回転により端型を脱着させる中日ヒューム装置を製造販売しているので、A実用新案の構成要件は、いずれも中日ヒューム装置において利用されている公知のものである。したがって、被告は、先使用による通常実施権を有するから、新イ号装置の製造販売は適法である。
3 新ロ号装置及びロ号装置(以下、併せて「新旧ロ号装置」という。)の製造販売はB特許権の直接侵害にあたるか。
(原告の主張)
(―) B特許発明の構成要件たるB▲1▼ないしB▲4▼は、次のとおり、新旧ロ号装置の構成要件たるロ▲1▼ないしロ▲4▼(ロ▲1▼′、ロ▲3▼′を含む)をそれぞれ充足するので、新旧ロ号装置はB特許発明の技術的範囲に属するものである。
(1) B▲1▼とロ▲1▼及びロ▲1▼′との対比
B▲1▼は爪片が軸杆に固定されているのに対して、ロ▲1▼及びロ」▲1▼はハッカーが軸杆に遊嵌されているが、これは爪片が軸杆と共に回転するか、単独で回転するかの差異であって、設計上の微差にすぎない。
(2) B▲2▼とロ▲2▼との対比
両者は同一構造である。
(3) B▲3▼とロ▲3▼及びロ▲3▼′との対比
B▲3▼はボルトとナットを利用して、ナットに固定された爪受環係合用爪付爪板を型枠の半径方向に沿って移動自在としたのに対し、ロ▲3▼はラックとピニオンの機構を利用して、ラックに一体の係止移動片を移動溝中で型枠の半径方向に摺動できるようにし、係止移動片の先端の係合用突片を、端型の外周縁角部(ロ▲3▼′においては端型の係合溝)に係合させ、係止移動片により端型を把持できるようにしているものであり、B▲3▼もロ▲3▼及びロ▲3▼′もほぼ同機構である。かかる作動をボルトとナットで行うか、ラックとピニオンで行うかは、機構学上、設計上の微差といえる。
さらに、B▲3▼は爪片を回転させるために伸縮杆の伸縮作動を用いているが、ロ▲3▼及びロ▲3▼′はハッカーを回転させるために係止移動片の回転作動を用いている。すなわち、軸杆を中心に爪片を回転させるにあたり、B▲3▼は伸縮杆を伸張して爪片を押しやって回転させ、ロ▲3▼及びロ▲3▼′は係止移動片を回転させて叩きピンを押圧ピンに当接させて爪片を押しやって回転させているのである。したがって、両者は爪片の回転方法に微差はあるものの、当業者が容易に設計変更できる機構上の差異にすぎない。
(4) B▲4▼とロ▲4▼との対比
両者は同一である。
(二) 設計上の微差(均等)
(1) 目的・作用効果
B特許発明は、別紙B特許公報記載のとおり、従来手作業で行われていたコンクリート管の型枠分解を自動的に行う装置に関し、コンクリート管の多種管径に適用できることを目的とし、型枠の径が変化しても爪受環と爪片用の軸杆との距離及びスライダー側の爪と伸縮杆との距離を一定とし、この爪と伸縮拝が一体的に型枠の半径方向に移動するようにしたことにより、型枠の多種管径に適用できる型枠分解装置を提供するという効果を有する。
そして、新ロ号装置においても、外し盤側の係合用突片と叩きピンとの距離を一定とし、この係合用突片と叩きピンとは一体的に型枠の半径方向に移動するようにしたことにより、型枠の多種管径に適用できるという効果を有している。
したがって、新ロ号装置とB特許発明とは、目的、作用効果がほぼ同一である。
(2) 置換容易性
B特許発明と新旧ロ号装置とは、▲1▼爪受環に対応する端型外周面のテーパー形状、▲2▼ボルトとナットに対応するラックとピニオン、▲3▼直線運動をする伸縮杆に対応する円弧運動をする叩きピン等の点で構造が異なるが、目的、作用効果は同一であり、また、これらの技術はいずれも機械技術分野で使用されており、置換は容易である。
a ▲1▼(爪受環の有無)について
新旧ロ号装置においては、B特許発明のような爪受環がない。しかし、B特許発明において、爪受環は、爪受環係合用爪付爪板を外周上下方向から端型をクランプするために設けられているところ、ロ号装置では、端型の係合溝の中に係止移動片の係合用突片が係合されることによりクランプし、また、新ロ号装置では、係止移動片の係合用突片の角が端型の外周端縁の角に係合して外周の四方向からクランプする。したがって、B特許発明もロ号装置及び新ロ号装置も、いずれも爪受環係合用爪付爪板(係止移動片)で端型をクランプする点は同一である。
b ▲2▼(ボルトとナット、ラックとピニオン)について
B特許発明においては、爪受環係合用爪付爪板がボルトとこれに螺合したナットにより移動するのに対し、新旧ロ号装置では、係止移動片がラックとピニオンの噛合により移動する。しかし、ボルトを回転してナットをボルトに沿って移動させる技術と、ピニオンを回転してラックをピニオンの回転方向に移動させる技術は、いずれも移動方法としては周知の技術であり、当業者において容易に置換ができるものである。なお、被告のいうボルトとナットによる締めすぎ等の問題をラックとピニオンが解決するとしても、それはB特許発明の技術的課題とは関係がないから、その技術的範囲に影響しない。
c ▲3▼(伸縮杆の直進運動)について
B特許発明は伸縮杆の爪片回転用突子の直進運動を採用し、新旧ロ号装置では係止移動片に設けた叩きピンの回転運動を採用している。しかし、両者の目的は、いずれも爪片を回転させて端型の押圧固定を解除することにあり、また、B特許発明の「伸縮杆と突子」とロ号装置及び新ロ号装置の「係止移動片と叩きピン」は、それぞれに目的、機能が対応している。B特許発明は、伸縮杆の直進運動を強調して特許を得たものではなく、爪片を回転させることに眼目がある。
新ロ号装置においては、ハッカーを回転させるための叩きピンを有した係止移動片が外し盤に進退自在に装着されており、係止移動片の係合用突片が端型を把持してこれを取り外しており、外し盤がハッカーの回転と端型の取り外しの二つの動作を行う。そして、前述のように新ロ号装置とB特許発明の構造は対応しており、B特許発明においても、爪片を回転させるための伸縮杆や爪受環係合用爪付爪板が、外し盤と同様に端型方向に進退自在なスライダーに装着され、これらにより爪片を回転させ、端型をクランプするという二つの動作を行っている。なお、原告のB特許発明の製品においても、伸縮杆を作動させる油圧シリンダーと爪受環係合用爪付爪板を作動させる機構とは、一個の部材であるスライダーに装着され、かつ、複数の伸縮杆は、対応する複数の油圧シリンダーの同時作動により複数の爪片を同時に回転させているから、新ロ号装置が、外し盤により数個のハッカーを同時に一挙に回転させているのと異ならず、むしろ、大きな外し盤を回転させる機構より個別の伸縮杆で回転させる方が機構は単純である。
(3) したがって、ロ号装置及び新ロ号装置はB特許発明の構成要件に該当する構成と近似の構成を具備しており、前記のような構造上の差異は、設計上の微差にすぎず、B特許権の技術的範囲内である。
(被告の主張)
(一) B特許発明と新ロ号装置は次の点が異なる。
(1) B▲1▼とロ▲1▼について
B特許発明は、A実用新案を構成要件の一部としているところ、前述のように、新イ号装置とA実用新案は構造に違いがあり、その違いが新ロ号装置とB特許発明にも当てはまるので、前述のとおり、▲1▼爪片とハッカーの形状、▲2▼軸杆が回転可能かどうか、▲3▼圧縮バネの位置がタイヤの内側か、外側か、▲4▼ハッカーが固着されているかどうか、の四点において違いがあるほか、▲5▼爪受環の有無に違いがあるので、同一あるいは設計上の微差とはいえない。
(2) B▲3▼とロ▲3▼について
a 新ロ号装置の端型には爪受環はなく、爪受環に引っかけて端型を把持し移動させる爪受環係合用爪付爪板もないので、端型把持の機構が異なる。
b B特許発明では爪受環係合用爪付爪板はボルトとナットにより移動されるが、新ロ号装置では係止移動片はラックとピニオンにより移動されるので、構造、作用効果に重要な違いがある。
c B特許発明は、伸縮杆の伸縮、すなわち直進運動で先端を前進させることにより爪片を回転させている。これに対して、新ロ号装置では、叩きピンを外し盤ごと回転させる回転運動によりハッカーを叩いて回転させている。したがって、同機構あるいは設計上の微差とはいえず、重要な違いがある。
d B特許発明は、直進運動をする伸縮杆により爪片を回転させているが、端型を伸縮杆で外すことはできないので、別の装置である爪受環係合用爪付爪板の爪を爪受環に引っかけて後退させることにより端型を外している。これに対して、新ロ号装置では、ハッカーの回転と端型の取り外しは、同じ装置である外し盤に取り付けられた係止移動片が、前進、後退、回転等の運動をすることにより行っている。
(3) 要するに、B特許発明と新ロ号装置は、前述のA実用新案と新イ号装置との違いに基づく四点以外に、▲1▼爪受環及び爪受環係合用爪付爪板の有無、▲2▼ボルト・ナットか、ラック・ピニオンか、▲3▼伸縮杆の直進運動か、外し盤の回転運動か、▲4▼爪片の回転と端型の脱着の工程、の各点が異なり、これらの相違点は、B特許権の特許請求の範囲に記載された構成要件には含まれていない。
(二) 構造上の備差(均等)についての反論
(1) 技術思想の相違
B特許権の技術思想は、従前、手動で行なっていたハッカー式の型枠の端型の脱着につき、人間の動作を模倣して機械に置き換えたものである。すなわち、ハッカーを回転させるため人間がハンマーで叩く動作を、伸縮杆でハッカーの一端を押圧することに代え、また、端型を取り外すため人間が腕を伸ばして手で端型をつかむ動作を、爪受環係合用爪付爪板をスライダーによって前進させ、爪板で爪受環をつかむことに代えたのであり、ハッカーの回転と取り外しは独立の工程になっている。
これに対し、新ロ号装置の技術思想は、人間の動作の模倣ではなく、ハッカーの回転と取り外しの合理化を主眼とし、同一の外し盤に取り付けられた係止移動片により、外し盤全体を回転させて全部のハッカーを一挙に回転させ「さらに、係止移動片を移動させて外し盤ごと後退させて端型を取り外すというものである。なお、新ロ号装置は、新規性、進歩性が認められて特許登録された(出願番号・平成一―二一四六二八、公告番号・平成四―二一四六二八、登録日・平成五年八月十三日、登録番号・一七八〇〇八六)。
(2) 作用効果の違い
均等の要件としての作用効果の同一性は、これは、発明の目的あるいはこれに近い抽象的な作用効果ではなく、その発明が特有の技術手段を取ったことによる特有の作用効果につき判断すべきものである。
本件において、B特許発明及び新ロ号装置は、いずれも爪片(ハッカー)を回転させること及び端型を型枠から外すことを目的とする点では同じであるが、B特許発明は、爪片の回転という目的を達成するための具体的解決手段として伸縮杆という構成を取り、新ロ号装置は、外し盤及び係止移動片という構成を取っている。その結果、B特許発明は、伸縮杆毎に油圧シリンダーが必要であり、そのための油圧ポンプやモーター等の運動機構が必要になり、機構が複雑になるのに対し、新ロ号装置は、係止移動片を外し盤ごと回転させることにより、ハッカーの回転と端型の取り外しを一挙に行なえるので、機構が単純である。したがって、新ロ号装置の方が、B特許発明に比べて故障も少なく、操作速度も速いほか、回転運動により少ない力で円滑にハッカーを回転させることができるので摩擦、損傷も少ない。
また、ボルトとナットは物を締めて止める部品であるのに対し、ラック、ピニオンは物を前後に動かす場合によく使われる機構であるから、B特許発明では、ボルトを回転して爪受環係合用爪付爪板に対する押圧力のみで端型を固定、移動しようとすると、ボルトが強く締まりすぎてナットが外れなくなってしまうのに対し、新ロ号装置のラック、ピニオンではそのような弊害はない。
(3) 置換容易性について
新ロ号装置は大規模で複雑な装置であり、B特許発明とは、外観も機構も異なる。当業者にとって容易に置換できるのであれば、原告は出願にあたって請求の範囲に新ロ号装置も含む形で出願できたはずである。なお、均等の要件としての置換容易性は特許の要件としての進歩性より低いと解されるところ、新ロ号装置は、前述のとおり新規性、進歩性が認められて特許登録されている。したがって、置換容易性はない。
4 旧装置又は新装置の製造販売はC特許権の間接侵害にあたるか
(原告の主張)
(一) 間接侵害
(1) C特許発明の構成要件たるC▲1▼ないしC▲5▼は、次のとおり、新旧ハ号装置の構成要件たるハ▲1▼ないしハ▲5▼(ハ▲3▼′を含む)をそれぞれ充足する。
a C▲1▼とハ▲1▼との対比
C▲1▼はA実用新案に該当するものであり、ハ▲1▼は新旧イ号装置に該当する技術である。両者は、爪片が軸杆に固定されてこれと同時に回転するか、軸杆に遊嵌されて単独で回転するかの差異であって、設計上の微差にすぎない。
b C▲2▼とハ▲2▼との対比
両者とも同一である。
c C▲3▼とハ▲3▼及びハ▲3▼′との対比
C▲3▼の工程は、端型を筒型本体型より離脱してコンベア上に載せる型枠の分解装置に関する技術であり、ハ▲3▼及びハ▲3▼′は、新旧ロ号装置の使用に関する同様の技術である。
C▲3▼は端型を先に爪受環係合用爪付爪板で固定して、爪片を離脱位置へ切換え、端型を取り外してコンベア上に載せる作動をするに対し、ハ▲3▼及びハ▲3▼′では端型を係止移動片の回転によりハッカーを回転して離脱し、係止移動片の係合用突片により端型を把持して端型の取り外しを行いコンベア上に載せるものである。端型を係止移動片の係合用突片により把持するのも、爪受環係合用爪付爪板で固定、把持するのも、端型のクランプを行う工程は同一であり、爪片を回転させるのに伸縮杆を用いるか、係止移動片の回転作動を用いるかは設計上の微差であることは前述のとおりであるから、両者にはほとんど差異がない。いずれも爪片と端型との係合、離脱作用によって型枠の分解・組立作業が行われる点においては、実質的に同一であり、その具体的手順はC▲3▼とハ▲3▼及びハ′▲3▼とは実質的に同一方法とみることができる。
d C▲4▼とハ▲4▼との対比
両者は同一である。
e C▲5▼とハ▲5▼との対比
両者は同一である。
(2) そして、旧装置及び新装置は、それぞれ一体として組み合わされて旧プラント及び新プラントを構築し、C特許権の実施にのみ使用されるものである。したがって、被告が新旧各装置を製造、販売することは、C特許権を侵害する(特許法一〇一条二号)。
(二) 先使用(公知技術)についての反論
原告のC特許権との関係で問題となるのは、一体としての旧装置及び新装置であり、端型の脱着構造も含めた旧プラント及び新プラントであるから、旧装置及び新装置の構造の一部が公知技術であるとしても、新旧各装置を組み合わせた新旧プラントの全体構造はいずれも公知技術ではない。
(被告の主張)
(一) 間接侵害についての反論
(1) 新装置は、一体の装置ではなく、それぞれ物理的にも機能的にも独立した装置であり、三装置を組み合わせて使用されることもあるが、他の脱型方法と組み合わせて使用することもできる。すなわち、新イ号装置は、新ロ号装置を使用して取り外す場合もあるが、手動で取り外す場合もある。
また、新ハ号装置がC特許権の出願以前から被告の中日ヒューム装置において実施されていたことは前述のとおりであり、C特許発明以外の方法で使用されてきたことは明らかである。
(2) C特許発明は、A実用新案の装置とB特許発明の装置を方法の特許に書き直したにすぎず、それぞれの構成要件中の装置に関する記載の意味は必須のものである。しかし、新イ号装置がA実用新案に、新ロ号装置がB特許発明にそれぞれ該当しないことは前述のとおりであるから、新装置を使用した脱型方法はC特許発明に該当しない。
(3) また、C特許発明と新ハ号装置は次の点が異なる。
a C▲1▼とハ▲1▼について
前述のとおり新イ号装置はA実用新案とは異なる。
b C▲3▼とハ▲3▼について
前述のとおり新ロ号装置はB特許発明とは異なる。
また、新ハ号装置では、爪受環係合用爪付爪板に当たるものはない。C特許発明は伸縮杆で伸縮させて爪片を回転させるという構成をとっているため、伸縮杆とは別に爪受環係合用爪付爪板が必要なのである。新ハ号装置では、係止移動片で端型を把持するのは、ハッカーを回転させて離脱位置に切り換えてから後の工程で行っており、工程は同一ではない。
(二) 先使用(公知技術)
また、新ハ号装置がC特許権の出願以前から被告の中日ヒューム装置において実施されていたことは前述のとおりである。
5 原告の損害額
(原告の主張)
(一) 被告は、A実用新案権の公告の日である昭和五九年一一月十三日以降、イ号装置及び新イ号装置を三〇〇〇本(販売価格・各一本二〇万円、合計六億円)、B特許権の公告の日である昭和六〇年七月一〇日以降、ロ号装置及び新ロ号装置を三台(販売価格・各一台八〇〇万円、合計二四〇〇万円)、C特許権の公告の日である昭和六〇年一月一〇日以降、八号装置及び新八号装置を一〇台(販売価格・各一台五〇〇万円、合計五〇〇〇万円)、販売総額六億七四〇〇万円を製造販売した。
(二) 実施料相当額
右各装置の実施料は、販売価格の五パーセントが相当である。したがって、原告は、被告の右各装置の製造販売により、販売総額六億七四〇〇万円の五パーセントに相当する実施料相当額三三七九万円の損害を被った。
第三 争点に対する判断
一 争点1(被告が旧装置を製造販売したか)について
原告は、被告が旧装置を製造販売した旨主張し、証人小倉光治は一応これに沿うかのごとき供述をしているものの、右供述はあいまいであり、右供述のみから右製造販売の事実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。したがって、その余の点につき判断するまでもなく、旧装置の製造販売の差し止め及び旧装置の製造による本件特許権等の侵害を理由に損害の賠償を求める原告の請求には理由がない。
二 争点2(新イ号装置はA実用新案権の直接侵害にあたるか)について
1 構成要件の対比
(一) イ▲1▼及びイ▲6▼が、A▲1▼及びA▲6▼をそれぞれ充足することについては争いがない。
(二) A▲2▼とイ▲2▼について
A実用新案では、軸杆は鍔の軸孔に回転自在に貫通されているのに対し、新イ号装置では、軸杆はタイヤを貫通しているものの、ナットにより鍔に固定されており、回転できない。したがって、両者は構成を異にし、イ▲2▼はA▲2▼を充足しない。
(三) A▲3▼とイ▲3▼について
A実用新案では、圧縮バネは軸杆のナット側に介装されて、圧縮バネが爪片に直接当接していないのに対し、新イ号装置では、圧縮バネはタイヤの外側のハッカーとボルト頭との間に介装されており、ハッカーに直接当接している。したがって、両者は構成を異にし、イ▲3▼はA▲3▼を充足しない。
(四) A▲4▼とイ▲4▼について
A実用新案では、爪片が軸杆の外側に固着されており、軸杆と一体となって回転するのに対し、新イ号装置では、ハッカーが軸杆に固着されているのではなく遊嵌されており、軸杆は回転せずハッカーのみが回転する。
したがって、両者は構成を異にし、イ▲4▼はA▲4▼を充足しない。
(五) A▲5▼とイ▲5▼について
A実用新案の爪片と新イ号装置のハッカーの同一性につき争いがあるが、爪片とハッカーの具体的形状に差異があるとしても、これらが有する端型を型枠端部に押圧して保持するという機能に着目すれば、形状の差異は特段の意味を持たないと解される。したがって、両者の構成は同一であり、イ▲5▼はA▲5▼を充足する。
(六) 以上のとおり、新イ号装置はA実用新案の構成要件A▲2▼、A▲3▼及びA▲4▼を充足しないから、新イ号装置はA実用新案の技術的範囲に属しない。
2 設計上の微差(均等)について
(一) 原告は、A実用新案と新イ号装置は、いずれも爪片を圧縮バネで付勢して鍔に押圧、解除するという基本的技術思想を同じくするものであり、両者の構成要件の差異は設計上の微差であり、圧縮バネ、軸杆及び爪片の組合せ方についても当業者であれば容易に置換でき、特段の作用効果の差は生じないから、両者は均等の関係にある旨主張する。
(二) ところで、登録実用新案の技術的範囲は、実用新案登録の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて決めなければならず(実用新案法二六条、特許法七〇条一項)、また、実用新案登録請求の範囲には考案の構成に欠くことができない事項のすべてを記載しなければならない(実用新案法五条五項)。したがって、ある装置が登録実用新案の技術的範囲に属するかどうかは、あくまで出願者が考案の構成要件として記載した実用新案登録請求の範囲に表現された構成要件との対比により判断すべきである。
もっとも、出願人があらゆる場合を想定して実用新案登録請求の範囲を記載することが困難であることに鑑み、権利者と第三者との利益衡量の見地から、登録実用新案の一部の構成要件の置換によっても同一の目的、作用効果が得られ(置換可能性)、かつ、右置換が当業者にとって容易である(置換容易性)場合には、登録実用新案と均等の関係にあり、その技術的範囲に属するものといいうる(均等論)。
(三) そこで、本件において新イ号装置がA実用新案と均等の関係にあるかにつき検討するに、両者は、前記1のとおり、A▲2▼(軸杆の回転性)、A▲3▼(圧縮バネによる爪片の押圧)及びA▲4▼(軸杆と爪片の固着性)につき構成を異にするが、いずれも、端型を型枠端部に押圧保持している爪片を、軸杆を中心として回転可能とすることにより、端型を着脱可能とした点で、目的、作用効果は同一といえる。
しかし、A▲2▼については、軸杆が回転することによりその端部に固着された爪片が回転するのであるから、イ▲2▼のように軸杆を回転できないようにすることはできない。A▲3▼については、軸杆の外側端部に爪片が固着されており、軸杆と爪片とは相対運動はできないので、爪片の外側に軸杆を延長してイ▲3▼のように外側に圧縮バネを設けても、これによりハッカーが端型を型枠端部に押圧することはできない。A▲4▼については、爪片は軸杆端部に固着されることにより支持されており、イ▲4▼のように軸杆に遊嵌すると、支持手段がなくなって端型を維持することができない。
したがって、これらの各構成要件の置換により生じる不都合を解消するためには、これらの置換を組み合わせたり、別の機構を設けたりする必要があるので、置換容易性があるとはいえない。
(四) しかも、A実用新案の考案者である証人小倉光治の供述によれば、出願時には圧縮バネにつき内側と外側の両方に配置する構成を設計していたが、内側の方がコンクリート液が付着しにくいため、弁理士と相談の上、内側に配置する構成で出願したことが認められるところ、原告は右のとおり実用新案登録の出願にあたり、圧縮バネを外側にするものも含むように請求の範囲を記載することができたにもかかわらず、これを意識的に除外して出願したのであるから、このように意識的に除外された構成を有する新イ号装置について均等論を適用すべきではない。
(五) また、原告は、A実用新案はパイオニア発明であるので、その保護範囲は広く解するべきであると主張するが、証拠〔乙二、三、四の一ないし23、八、検乙一、証人久保田日呂士、証人小倉光治(一部)〕によれば、A実用新案が出願された昭和五五年当時において、ハッカーの回転により端型を着脱するコンクリート管型枠は既に公知のものであったことが認められる。
そうすると、A実用新案の新規な技術的思想はハッカーの回転により端型を着脱する点にあるのではなく、ハッカーを回転可能にするための具体的構造にあるというべきであって、原告の右主張は採用しがたい。
(六) したがって、新イ号装置はA実用新案と均等の関係にあるとはいえない。
3 以上より、新イ号装置はA実用新案権を侵害しない。
三 争点3(新ロ号装置はB特許権の直接侵害にあたるか)について
1 構成要件の対比
(一) ロ▲2▼及びロ▲4▼が、B▲2▼及びB▲4▼をそれぞれ充足することについては争いがない。
(二) B▲1▼とロ▲1▼について
B▲1▼はA実用新案の構成要件そのものであり、ロ▲1▼は新イ号装置の構成要件そのものであるところ、前記二で争点1について判示したとおり、新イ号装置はA実用新案の構成要件を充足しないから、ロ▲1▼はB▲1▼を充足しない。
(三) したがって、ロ▲3▼がB▲3▼を充足するかどうかにつき判断するまでもなく、新ロ号装置はB特許発明の構成要件を充足しないことが明らかである。
2 設計上の微差(均等)について
B特許発明がA実用新案の構成を構成要素に含み、新ロ号装置が新イ号装置の構成を構成要素に含むことは、前記1(二)のとおりであり、また、新イ号装置がA実用新案と均等の関係にないことは、前記二2で判示したとおりである。したがって、ロ▲3▼とB▲3▼の相違についての置換可能性及び置換容易性につき判断するまでもなく、新ロ号装置とB特許発明が均等の関係にないことは明らかである。
3 以上より、新ロ号装置はB特許権を侵害しない。
四 争点4(新装置を用いた脱型方法はC特許権の間接侵害にあたるか)について
1 原告は、新装置は一体として新プラントを構成して使用されるものであり、これらによる脱型方法は、C特許権の実施にのみ使用されるものであると主張する。
そこで、C特許発明の脱型方法の構成要件と、新装置を使用した脱型方法の構成につき、各装置毎に検討する。
2 新イ号装置について
C特許発明の構成のうちのC▲1▼は、新イ号装置の構成であるイ▲1▼ないしイ▲6▼に対応している。しかし、C▲1▼はA実用新案の構成を全て含むので、C特許発明の方法は、A実用新案の型枠を使用する脱型方法である。そして、前記二のとおり、新イ号装置とA実用新案とは同一でも均等でもない。
したがって、新イ号装置を使用する脱型方法はC特許発明の脱型方法にはあたらない。
3 新ロ号装置について
C▲1▼は新ロ号装置の構成であるロ▲1▼に対応するところ、前記三1(二)のとおり、ロ▲1▼は新イ号装置の構成を全て含む。そして、右2のとおり、C▲1▼はA実用新案の構成を全て含み、新イ号装置とA実用新案とは同一でも均等でもない。
したがって、新ロ号装置を使用する脱型方法はC特許発明の脱型方法にはあたらない。
4 新ハ号装置について
C▲1▼は新八号装置の構成であるハ▲1▼に対応するところ、ハ▲1▼は新イ号装置の構成を全て含んでいる。しかしながら、右2のとおり、C▲1▼はA実用新案の構成を全て含むところ、新イ号装置とA実用新案とは同一でも均等でもない。
したがって、新ハ号装置を使用する脱型方法はC特許発明の脱型方法にはあたらない。
五 結論
よって、その余の点につき判断するまでもなく、原告の本件請求は理由がない。
(口頭弁論終結の日 平成九年一二月一五日)
(裁判長裁判官 馬渕勉 裁判官 橋本都月 裁判官 廣瀬千恵)